私たちは、4月から5月にかけて新型コロナウイルス感染症の拡大におびえ続け、不要不急の外出を控えるなど、政府や地方自治体の自粛要請に応え、不自由な生活を過ごすという例年とは全く違う春から初夏を過ごしました。特に今年は、政府が世帯宛に配布したマスクや特別給付金申請書の配達など、国民利用者が今か今かと待ち続ける大事な郵便や小荷物の配達で例年より忙しい5月となりました。この仕事はしばらく続くと予想され、これからの梅雨の時期は、外務作業に従事する組合員のみなさんにとっては、ご苦労もひとしおのことと思います。
しかし、気温が上がるにつれ、感染防止対策が功を奏したことと相まって新たな感染者もごく僅かとなったことから、5月26日に政府は、4月に出した「緊急事態宣言」の解除宣言を行いました。大阪においても少しずつですが日常を取り戻しつつあります。湿気の多い梅雨の時期を好きと言われる方は余りいらっしゃらないかと思いますが、元々ウイルスは、紫外線と高温多湿には弱いと言われていますから、梅雨を迎え、気温が高くなることに伴い、感染拡大が鈍化するのではないかと少しだけ期待をしています。
新型コロナウイルス感染症という予期せぬ外圧によって私たちの働く環境が大きく変わるかもしれません。自粛等によって企業活動が制約されたことに伴い、国内景気が急速に悪化しています。今年の冬までは人手不足と言われましたが、民間企業では、ここにきて人手が過剰とする割合が急増しており、先月の組合員のみなさんからのお便りもコロナ禍による経済の悪化を心配するものが多かったように記憶しています。連合が行っている労働相談などでも解雇や内定取り消し、休業補償などの雇用に関する相談が増えていることから、先月連合大阪は、大阪府吉村知事に対して雇用対策・労働対策強化に取り組むよう要請をしたところです。
JP労組もこの間、特別休暇制度の拡充や時差出勤の励行、感染防止対策物品の拡充等を経営側に求めてきましたが、長年労使交渉で求めてもなかなか実現しなかった在宅勤務などが今回導入となりました。人々に厄災をもたらした新型コロナウイルスですが、コロナ発症前と発症後の社会は大きく変わることになるでしょう。今回の特別休暇等の制度は不十分であったとは思いますが、今回経験を積んだことで秋以降の第二波感染に備えて制度を充実させて組合員の健康維持に役立てなければならないと考えています。
米国の政治学者であるイアン・ブレアー氏によると「コロナ禍を経験した世界は、リーダー不在のG0(ゼロ)という状況になり、サプライチェーンが分断され、各国が囲い込みに入っている。グローバリゼーションとは反対の方向に進み、今回在宅勤務できなかった職業は、人間からAIやロボットへの転換が進むことによって経済格差が益々進むだろう。」と予想しています。また、AIやIotなどの最新技術を使って、中国がコロナウイルスを封じ込めたように、多少のプライバシーは犠牲にしても防疫を優先する社会が近いうちに誕生するかもしれません。第4次産業革命と言われたAIやIotが人間の働きに置き換わる時代が案外と早く来るのかもしれません。
春の訪れとともに突如やってきた厄災を新たな働き方を模索するきっかけにしなければなりませんし、そういうことの提言ができる労働組合でありたいと思っております。コロナ後の日本は非常に厳しい経済不況に襲われるかもしれませんが、そういう時こそ、労働組合に結集するみなさんの知恵で混乱を最小限にし、困難を乗り切らなければなりません。改めて、一人でも多くの組合員のみなさんの結集と参画をお願い申し上げてご挨拶とします。
みなさん、今月もご安全に。
2020年6月
日本郵政グループ労働組合
近畿地方本部
執行委員長 岡田 陽平